「ANY1 CHOCO」ブランド開発インタビュー (vol.2)
NHPの加水分解技術を応用した、プラントベース(植物性原料)、乳製品不使用(デイリーフリー)、小麦粉不使用(グルテンフリー)にこだわったチョコレートブランド「ANY1 CHOCO」。ブランドのデビューに際して、立ち上げに関わった4人の主要メンバーにシンガポールでの旗艦店オープンのタイミングで、それぞれのプロジェクトに対する思いを伺いました。(聞き手:岡部 修三)
② 鈍寳 敬之 さん
技術の総合的なディレクション
明治製菓で20年菓子の開発に従事、チョコレート、グミ、ガムの開発を担当。その後大手香料メーカーで取締役研究所長として17年菓子メーカーへの製品提案を行う。2022年にタカラ株式会社を起業し、食品開発コンサルタントとして多数の企業を指導。現在、NHP社の顧問として、主に植物性チョコレートの開発を牽引している。
岡部:NHPとの出会いから教えてください。
鈍寳:2020年くらいのタイミングで、NHP代表熊澤さんとご縁をいただき、NHPの技術を使った分解物の紹介を受けました。一通り紹介いただいた中で、ちょうどその頃、植物性ミルクとして活用できる原料を探していたところだったので、白インゲン豆とうるち米の分解物に興味を持ちました。その後、それらを使ったミルクチョコレートを提案したのですが、とても驚いていただいたことを今でもよく覚えています。
岡部:NHPにおける、プラントベース ミルクチョコレートの始まりは、まさにそこからですよね。そうした意識を持ち始めたきっかけは何かありますか?
鈍寳:親族との食事での出来事が一つのきっかけになっています。食後に、何気なくデザートを頼もうとしたところ、「甥っ子にアレルギーがあるので、今日はみんなで我慢しよう」という話になったことがありました。そのやりとりが忘れられなくて。詳しく聞くと、洋菓子は基本食べられない、当然チョコレートも食べたことがない。それを聞いて、これまでお菓子の業界で長く勤めてきた自分としては、なんとかしなくては、と強く思ったことをはっきりと覚えています。
岡部:なるほど。このプロジェクトのコンセプトを表す “For all, with all”はまさに、いろんな人のそう言った経験を変えていきたいという思いが込められています。
鈍寳:先ほどの話に続きがあって、その時とっさに、「おじちゃんが、食べられるものを作ってあげるね」と言ってしまったのです。なんの根拠もなかったのですが、言わずにはいられなかった。
岡部:それは引き下がれませんね(笑)。 改めて形になったブランドを見ていかがですか?
鈍寳:もう、感無量ですね。さっき、その甥っ子に、「君がいたからこれができた」とメッセージを送ったばかりです。私は技術者なので、こうあるべき、ということは提案できますが、できることはそこまでです。NHPと熊澤さんは、それを覚悟を持って世に出してくれた。それが嬉しいですね。
岡部:この先、このブランドの展開に期待することはありますか?
鈍寳:まだまだこのプロジェクトはスタートラインに立ったばかりです。かつて大きな企業にいたからわかるのですが、みんながやりたいと思うことを今回やれている気がします。これはスタートアップだからできることだとも思います。
岡部: やりたい、とやる、は決定的な違いがありますよね。
鈍寳:気がつけば、チームができて、こうやって進んでいることは嬉しいですよね。みんなの夢になってきている。この先どこまでいけるか、見てみたいですね。そして、この多民族なシンガポールから始まって、最後は日本に戻って来てくれれば最高です。
聞き手 : 岡部修三
ブランド戦略、クリエイティブディレクション
環境デザインとストラテジデザインを行う、upsetters architects 主宰。ブランド構築に特化したLED enterprise 代表。JCDデザイン賞金賞、グッドデザイン賞、iFデザイン賞など、国内外での受賞歴多数。現在、NHP社のCCO(チーフクリエイティブオフィサー)として、クリエイティブ全般を牽引。