「ANY1 CHOCO」ブランド開発インタビュー (vol.1)
NHPの加水分解技術を応用した、プラントベース(植物性原料)、乳製品不使用(デイリーフリー)、小麦粉不使用(グルテンフリー)にこだわったチョコレートブランド「ANY1 CHOCO」。ブランドのデビューに際して、立ち上げに関わった4人の主要メンバーにシンガポールでの旗艦店オープンのタイミングで、それぞれのプロジェクトに対する思いを伺いました。(聞き手:岡部 修三)
① 藤田 浩司 さん
レシピ開発
2008年、国際的製菓コンクールWPTC(チョコレートピエス部門)チーム総合準優勝、部門優勝。2012年、同コンクール チーム総合優勝。ホテルや店舗での経験を活かして、現在、世界中で製菓技術の指導を行う。
岡部:まず、このプロジェクトにおける役割を教えてもらっても良いでしょうか?
藤田:NHPの技術を使って開発された素材を、最終的な商品にするためのレシピ開発を担当しています。私たちパティシエにとって素材は非常に重要ですが、普段なかなかそこにゼロから関われることは少ないので、貴重な経験でした。
岡部:その分、苦労はたくさんあったと思いますが、改めて振り返るとどうでしたか?
藤田:もちろん苦労はたくさんありましたが、それは当たり前のことなのでそんなに重要なことではありません。それよりもせっかく前例のないことに関わるのであれば、他にない成功を導かなければと思っていました。さらに、チョコレートの歴史はヨーロッパで始まり、長い間それを基準としてここまで来ています。その歴史に、製法も含めてアプローチすることは非常に面白い取り組みだと思います。
岡部:ANY1 CHOCOのコンセプトを詰めていく中で、藤田さんがパティシエとして活動をされる根元的なモチベーションとして、お菓子を通じた“よろこび”についてたびたびコメントされていたことが非常に印象的でした。
藤田:ちょっと大袈裟ですが、私にとってお菓子を作ってよろこんでもらうことは、人生そのものです。その体験の積み重ねが、今の私を作っていると言えます。だからこそ、あらためて楽しんでもらうだけでなく、少しでも体に良いものを提供したいと思っています。
岡部:そういった考え方は、パティシエの業界でも重要視される傾向にありますか?
藤田:増えてきているとは思います。ただ、現実的には個人でお店をやられているようなところが多いのが現状です。これまで積み上げてきたものを、材料の面でも、製法の面でも変えていく必要がありますから、大きな組織ではなかなか難しいと言えそうです。
岡部:今日こうやってANY1 CHOCOが無事デビューできました。改めて振り返って、NHPとの協業はいかがでしたか?
藤田:何より、熊澤さんと話していると本当に食のあり方を変えていけるような気がしてくる。それが一番重要な気がします。このプロジェクトに参加しているのは、そこに対する期待があるからです。
岡部: 確かに。あのポジティブな巻き込み力は特別ですよね。私も、今自分の経験を活かすなら、社会をポジティブに変えていけるものに関わりたい。そう思って関わらせてもらっているのでよくわかります。
藤田:そういう意味では、ANY1 CHOCOはまだスタートラインにたったに過ぎず、素材も含めてどんどんブラッシュアップしていきたいと思っています。
岡部:最後に、ANY1 CHOCO のブランドの展望について、何かイメージがあれば聞かせてください。
藤田:自分たちができることはまずは気づきを促すこと。少しでもこの取り組みを多くの人に知ってもらって、最終的には大手も含めた社会自体が変化するような、そんなきっかけに少しでもなればと考えています。
聞き手 : 岡部修三
ブランド戦略、クリエイティブディレクション
環境デザインとストラテジデザインを行う、upsetters architects 主宰。ブランド構築に特化したLED enterprise 代表。JCDデザイン賞金賞、グッドデザイン賞、iFデザイン賞など、国内外での受賞歴多数。現在、NHP社のCCO(チーフクリエイティブオフィサー)として、クリエイティブ全般を牽引。