国内最大手の米卸企業「株式会社神明」九州工場の鈴木良平様にお話をうかがいました。
自社のブランド米を販売するだけでなく、コンビニや外食チェーンなど様々な場所にお米を届け、新たなお米の食べ方を提案する米業界のリーディングカンパニー。創業120年。国内各地に工場があり、自社で開発された「飲める米糠」というオリジナル商品に、NHPの加水分解技術が使われています。
株式会社 神明 九州工場 様
佐賀県鳥栖市
熊澤:本日は、日本で最大手の精米企業である御社が、なぜ弊社の加水分解技術に興味を持ち、提携を始められたか、という話をお聞かせください。
鈴木様:神明はお米の精米加工の会社なのですが、お米を精米すると食用にできない外皮が約1割、出てきます。この外皮や胚の部分が粉状になった「糠(ぬか)」はそのままでは食べられませんが、ビタミンやミネラルなど様々な栄養素を含んでいます。そこで、せっかくのこの糠を何とか食用にできないかと模索する中で、NHPさんとの出会いがありました。
熊澤:我々NHPも、もともと加水分解によるお米の付加価値向上に取り組んできた会社でして、神明様からお問い合わせをいただいた糠の利用という取り組みは非常に画期的でした。そもそも糠は油分が多く、そのままでは酸化が早いため扱いが難しい。そんな、本来あまり食用に向かなかった糠の食用化を実現されたということで、そこに我々の技術がどう役立ったのか、ぜひ詳しくお聞かせください。
鈴木様:正直に言いますと、糠はそのままでは美味しくないんです。それを美味しくしたいというのが我々の第一テーマでした。また、雑菌の問題もあり、そのままでは食品としての商品化が難しい。しかし糠には本当に様々な栄養素が含まれているので、捨てるのはもったいない……。食用にするにはどうしたらというとき、御社の加水分解技術ならほぼ無菌化できて、その上、食味が上がる、しかも粘性が上がるということが分かったんです。実際、実験し食べてみたところ、甘みがあって食に向いていて、かつ水によく溶けた。そこから「飲める米糠」という、商品名そのまんまの商品が出来上がりました。
熊澤:なるほど。NHPの技術で加水分解すると、不溶性素材でも水溶性になって、溶けやすくなるんです。御社の「飲める米糠」は、うちでも利用している者がおりまして、お通じやお肌の調子に役立つと聞いています。「米糠」って、日本人には結構馴染みのある素材ですが、購買層はどういった方が多いのでしょうか?
鈴木様:やはり若い女性が多いですね。開発の段階から当社の関係者にもリサーチしていたのですが、元々女性って、どうもお通じがよくない方が多いようで、マグネシウムのサプリメントをよく飲んでいるという方がいらしたんです。この商品の物性も調べてみたところ、マグネシウムやその他のミネラル、ビタミンなど、様々な栄養素が入っていて、実際に試食してもらうと「もう離れられない」ということになり、同じように「飲める米糠」に変えた方も多かったんです。
熊澤:そうだったんですね。ところで神明様といえば日本最大のお米の卸であり、中でもNHPが提携した佐賀県鳥栖市にある九州工場は、様々な地域から集まったお米を精米し、九州各地に出荷するという非常に重要な拠点です。だからこそバイプロダクト(副産物)も多く出ると思うのですが、今回の米糠の有効利用に続いて今後、我々NHPとこんなものが作れたらいいなという構想はありますか?
鈴木様:当社では米以外にも様々な農産物を扱っているのですが、農産物には皮がつきものでして、食べられない部分が大量に出てきます。それを食用だけでなく、工業製品など様々な素材に転用できる可能性をNHPの技術に感じています。例えば稲の茎や葉や籾殻も細かく粉砕して転用できないかと考えています。
熊澤:いいですね。弊社にも「農産物をはじめ、地球上にあるものを、まるごと有効活用したい」というコンセプトがありまして、特に今後、野菜の非可食部分の有効利用をさらに進めていきたいと考えております。捨てられるはずのものをさらに活用していきたいです。
鈴木様:そうですね。SDGsの観点から見て、NHPの加水分解技術に私が一番魅力を感じる点は、分子結合を解いてしまうという点です。ちょっと大きな話になるかもしれませんが、いわゆる人工物と自然物の線引きって難しいですよね。例えばプラスチック製品だって元を正せば地球上の物。自然物と人工物を私の中で定義するなら「土に還る、地球にかえっていく」かどうかが重要で、加水分解の設備はそれを叶えるかもしれないと感じています。酵素を加えて発酵を早めるという点もまるでタイムマシンのようで、何か一緒にワクワクすることができそうです。
熊澤:ありがとうございます。さて今日はもう一点、技術導入から始まった人的交流についてもお話をお聞かせください。NHPの設備は、単に設置していただくだけでなく、御社に技術サポートという形で人員を呼んでいただいたり、逆にNHPにもご訪問いただいたり、人と人との交流にもつながっています。本来なかなか結びつかない佐賀県と新潟県で、モノづくりのための交流が生まれた……これも我々NHPの社会的な役割だと考えております。時には地域の美味しいものを、みんなで食べに行くといった交流もありました。
鈴木様:そうですね。仕事ばかりの交流ではなく、一緒に食事をすると人間ってより仲良くなれますよね。うちの社員は元々少しおとなしいメンバーが多いんですが、御社と技術交流させていただくうちに、だいぶ変わってきたなと感じています。元々『物』は作ってたんですが、より、自分たちで「モノづくり」をしてるという実感が出てきた気がします。
熊澤:それは嬉しいお話です。これからは特に若い人たちに佐賀と新潟を互いに深く知ってほしいし、そこから、もっと仕事の楽しさというモチベーションに繋がっていけばと思います。
鈴木様:それぞれの地域で文化や人の性格も違いますからね。若いうちはなかなか佐賀と新潟を行き来する機会もなかったでしょうし、お互い、地域の食や人間性を学べたのではないでしょうか。今後も深く交流を続けていきたいですね。
熊澤:本当にそう思います。今日は貴重なお時間をどうもありがとうございました。
(聞き手:NHP 熊澤)
株式会社 神明 九州工場
住所:〒841-0048
佐賀県鳥栖市藤木町字若桜6番地8
TEL:0942-81-5505