博多の名店「チョコレートショップ」の佐野隆様にお話をうかがいました。
“博多のチョコのはじまりどころ”として愛され続ける洋菓子専門店。吟味した安心・安全で新鮮な材料で、代表作「博多の石畳」をはじめ、様々なスイーツを作る博多の有名店です。1942年創業。佐野隆様は代表取締役でもあり、人気のお菓子を生み出し続けるチョコレート職人でもあります。
チョコレートショップ様
福岡県博多市
熊澤:チョコレートショップさんとのお付き合いは、その美味しさと菓子作りの姿勢にひかれ、弊社の方から「ボタニミルクチョコパウダーをぜひ試してみてほしい」とお店を訪問させていただいたのが始まりです。お菓子作りに実際に使ってみた感想はいかがでしたか。
佐野社長:まず、「使えるな」と思いました。思ったより普通にショコラだな、これが本当にボタニカルショコラなの、というぐらいクオリティが高い。お客様の口に入っても違和感はないな、と。
熊澤:どういったお菓子に使ってみたのでしょう?
佐野社長:まずチョコレートトリュフを作ってみました。通常トリュフはカカオパウダーの上に落として、生チョコのパウダーがけをします。ただそれが要冷蔵のため、お客様が持って帰る間にココアが溶けてしまうこともあるし、ストックの温度管理が大変でロス率が問題でした。そこで、いただいたこのパウダーを使い、冷蔵庫に入れたり外に出したり、いろんな環境でいじめる……というか、試してみました。結果は、驚くことに何も変わらないんです。これだけの温度差、ちょっと結露を起こしてもおかしくない状態で結露しない。泣かない※、ベトつかない。
※「泣く」は、製菓の専門用語で、表面で結晶化した糖が、湿度などによりベタついてしまうこと。
熊澤:トリュフのパウダーに使っていただいたんですね。使用感には問題なかった。では、食感というか、味の方はいかがでしたか?
佐野社長:2~3週間ほったらかしにした試作品を食べてみても、口の中でさっと溶けていく。今までにない商品です。香りもちゃんとあって、「これ本当にボタニカルなの?」って、びっくりしました。そこで、逆になぜ植物性でこんな味にできたのか知りたくなりました。
熊澤:通常のミルクチョコレートの場合、全粉乳を使いますが、ボタニミルクチョコパウダーの場合、独自の技術で開発したケミカルフリーな加水分解物を使っています。原料は白インゲン豆と玄米のもち米。それらを加水分解処理しますと、粉ミルクに近いような味わいになるんです。それをカカオマスに練り込みます。
佐野社長:独自の技術なんですね。
熊澤:はい。独自の特徴として耐熱性も備えているため、溶けにくい。しかも水溶性ですので、口に含むと口の中の水分で溶けるんです。水の中に入れて冷たいチョコレート飲料も作れます。
佐野社長:そうなんですね。驚いたのが、これだけ何があってもベタつかないのなら、実際食べた時の食感はどうなんだろうと思っていたのに、口の中では水分でキレイに溶けていくんです。これは不思議ですよね。簡単にすぐできて、すぐ水に溶けるし。菓子作りでは、よくダマになるっていうことがあるんですが、それが全くない。例えばスポンジなどに練り込むというのも1回実験してみたんですけど、全く違和感なく焼き上がってきました。ちょっぴり不思議な食感になりますが、あれはなんなのでしょう。
熊澤:それは繊維質なんです。豆って特に繊維質が多いので、食感も感じますね。
ところでトリュフやスポンジの他にはどんなレシピで試してみたのか、教えてください。何か発見はありましたか?
佐野社長:一番面白いなと思ったのは、フルーツピューレと合うことでした。
熊澤:フルーツ系と合うとは知りませんでした。
佐野社長:フルーツピューレを例えばスイート系などと合わせると、酸味と苦味が出て少しえぐい味になるんですけど、これを使うとまろやかなんですよ。
熊澤:新しい素材ですので、様々な用途で試していただけると、全く新しい味わいができあがるかもしれません。ボタニミルクチョコパウダーは、アレルゲンフリー(※28品目不使用)、アニマルフリーということもあり、今までチョコを避けていた方でも食べられますし、様々な可能性がひろがりそうです。
佐野社長:これからの時代、非常に大切ですね。スタッフも面白い素材に非常に共鳴していました。
熊澤:福岡はインバウンド需要も大きいですし、アジア圏をはじめ、世界中の方が注目している地域です。食もそういう多様化に対応する必要がありますし、このボタニミルクチョコパウダーがお役に立てると思っています。とくに乳アレルギーの方にチョコレートの楽しみを知っていただきたい。じつは実際に、乳アレルギーで今までミルクチョコレートで食べたことがないというお子さまに食べていただいたところ、非常に喜んでいただけました。
佐野社長:今まで食べられなかったわけですし、みんなと一緒のものが食べられるわけですから嬉しいでしょうね。ボタニカルだけど味わいはミルクチョコレートというものを食べられるわけですから。これからの時代、そういった貢献って大事ですね。
熊澤:はい。ただ、我々は画期的な素材を作る能力は持っているつもりですが、使い方をどこまで洗練したものにできるか、どういったカタチで人に喜んでいただくかという仕上げの部分の能力はございませんので、お力をお借りしたい。
佐野社長:逆に、お菓子を作る方は、素材がないと表現できないんです。そして新しい素材の発見って大切なんです。ただ昔と同じものを作っていればいいということではなく、多様化していく時代の中で、私たちも新しい表現で、お客様のニーズに応えたいと思っています。ボタニミルクチョコパウダーは画期的な商品ですから、様々な試作を繰り返しながら、様々なお菓子のカテゴリーで表現したいと思ってます。これから、このボタニカルショコラをさらにブラッシュアップしていくため、共に開発に協力し合っていきたいですね。
熊澤:ぜひ、よろしくお願いします。チョコレートショップさんは「チョコレートの始まり」というキャッチフレーズのとおり、非常に美味しさに前向きですね。80年もの長い歴史を築いてきたことにも、うなずけます。
佐野社長:そうですね。僕らも80年もの間やってきてますので、チョコレートに対し、美味しさはもちろん、「どれだけ安心安全か」というのを信条にしております。それが守れないと僕らの理念が全て崩れますから。
また、いろんな意味で食が難しい時代ですから、僕らが正しいと思うもの……ちゃんとお客様の目を見て、「どうぞ安心してお召し上がりください」と言えるものを提供したい。それが美味しさを続かせていく意味ですから。地元博多に根差し、お客様のおかげで積み重ねられた80年ですから、お返しとして、しっかり安心安全を表現していくために、こういう素材に出会えて僕も非常に嬉しいです。
熊澤:ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。
(聞き手:NHP 熊澤)
チョコレートショップ本店
営業時間:10:00~19:00(不定休)
住所:〒812-0024
福岡市博多区綱場町3-17
TEL:092-281-1826(本店代表)
0120-07-1826